フィリピン人材の受入実務では、「以前は送出機関経由で進めていたが、今はもう提携していないので、
これからは会社単独で Direct Hire(送出機関を介さない直接採用) に切り替えられるのではないか」
という相談が少なくありません。
しかし、この論点は、単に「今、送出機関との提携があるかないか」だけで判断できるものではありません。
実務上は、過去に認可送出機関との提携履歴があったか、その関係がいつ・どのように終わったか、
そしてそこからどの程度の期間が経過しているかが重要になります。
このページでは、Direct Hire(送出機関を介さない直接採用) と
Direct Hire Ban(送出機関を介さない直接採用の原則禁止) の前提を確認したうえで、
過去に送出機関と提携していた企業が、いつ直接採用を検討できるのかを整理します。
結論からいえば、「提携が今ない」だけでは足りず、少なくとも提携終了後1年ルールを意識して判断する必要がある
というのが、公開情報ベースでの安全な読み方です。
この解説ページの前提
本ページでは、検索上の分かりやすさを優先して、
Direct Hire(送出機関を介さない直接採用)、
Direct Hire Ban(送出機関を介さない直接採用の原則禁止)
という表現を用います。
また、ここでいう送出機関とは、原則として
Licensed Recruitment Agency(認可送出機関) を指します。
2回目以降は、本文では「送出機関」と表記します。
なお、このページで問題にするのは、Company Accreditation そのものの新規取得手続ではなく、
過去に送出機関と提携していた受入企業・雇用主が、いつ直接採用側へ進めると考えるべきか
という論点です。
制度根拠の全体像に戻りたい方へ
このページは、MWO申請の制度根拠のうち、Direct Hire と送出機関ルートの関係を実務寄りに掘り下げた解説ページです。
法令系シリーズ全体の構造や、他の論点とのつながりを一覧で確認したい場合は、次の解説ページからご覧ください。
目次
送出機関との提携が今ないだけでは直接採用に切り替えられるとは限らない
この論点で最も多い誤解は、「現在は送出機関との提携がない」=「すぐに Direct Hire を使える」
と考えてしまうことです。
しかし、制度上ここで見られるのは、現在の状態だけではありません。
問題になるのは、その企業が過去に送出機関経由でフィリピン人材を受け入れていた企業なのか、
そして、その提携関係がいつ終了したのかです。
したがって、実務では「今、提携がない」という一点だけでは足りません。
過去の提携履歴と、その終了時点からの経過期間を確認して初めて、
直接採用を前提に進めてよいかどうかを考えることになります。
ここで先に押さえたいこと
今提携しているかどうか
だけでは判断できません。
過去にどの送出機関と提携していた企業か
その関係がいつ終わったか
そこからどの程度経っているか
を先に確認する必要があります。
まず前提|Direct Hire は自由選択の制度ではない
まず押さえるべきなのは、フィリピン海外雇用制度において、
Direct Hire は企業が自由に選べる一般的な採用ルートではない、という点です。
ここでいう Direct Hire とは、認可送出機関を介さずに本人を直接採用することです。
そして Direct Hire Ban とは、そのような直接採用を原則として認めず、
送出機関経由の構造を基本線とするルールを指します。
そのため、企業側が「今回の案件は専門性が高い」「候補者とすでに話がまとまっている」
「紹介会社を通さなくても問題ないはずだ」と考えても、
それだけで直ちに直接採用が認められるわけではありません。
実際には、制度上の例外類型に入るかどうか、
さらにその企業に過去の提携履歴があるかどうかを別々に確認する必要があります。
つまり、直接採用が理論上あり得る案件であることと、
その企業が今このタイミングで直接採用に進めることは、同じ論点ではありません。
そして、実際に例外申請で何が確認されるのかは、
直接採用禁止の例外申請とは|必要書類と確認ポイント
で整理しています。
ここで分けて考えたい二つの論点
候補者や職種の側から見て直接採用の例外類型に入り得るか
↓
その企業が過去の提携履歴も踏まえて、今このタイミングで直接採用に進めるか
送出機関との提携関係はどう終わるのか
この問題を正しく理解するには、まず
送出機関との提携関係が制度上どのように終わるのかを見ておく必要があります。
実務感覚では「提携終了」と一言でまとめがちですが、制度上は少なくとも、
有効期限切れに近い流れ、
キャンセレーション(送出機関との提携関係の解消・終了処理)に近い流れ、
そして別の送出機関への移行を含む流れ
を分けて考えた方が安全です。
本ページでいう キャンセレーション(送出機関との提携関係の解消・終了処理) とは、
認可送出機関との認定された提携関係を、合意解消その他の制度上の終了処理によって終わらせることを指します。
したがって、単に「もう付き合いがない」という口語的な意味よりも、
制度上どのように終了したものとして扱われるかに重心があります。
有効期限切れに近い形で終わる場合
更新されないまま期間満了に近い形で関係が終わる場合です。
企業側では「自然に切れた」と理解しがちですが、実務上は、その終了日を曖昧にしないことが重要です。
提携解消・終了処理に近い形で終わる場合
企業と送出機関の関係を、合意などにより明示的に終了させる場合です。
このページでいうキャンセレーションは、こうした送出機関との提携関係の解消・終了処理を指します。
ここでは「もう付き合いがない」という事実だけでなく、制度上どう終了処理されたかが問題になります。
別の送出機関へ移ることを前提にした場合
企業側の感覚では「今の送出機関とは切れた」であっても、
制度上は単純な終了ではなく、別の送出機関への移行として整理されることがあります。
形式上の終了だけでは足りない場合もある
単なる有効期限切れやキャンセレーションだけで片づけず、
実務上どのような状態として扱われるのかを確認する視点が必要です。
ここを曖昧にしたまま「提携はもう終わっています」とだけ説明すると、
企業側では完結しているつもりでも、
フィリピン側では別の読み方をされるおそれがあります。
なぜ提携終了後1年ルールが問題になるのか
ここで重要になるのが、公開FAQで示されている
提携終了後1年ルールです。
公開FAQでは、過去に認可送出機関と提携していた企業について、
その関係の有効期限切れまたはキャンセレーションから1年経過後に
直接採用が認められ得る、という整理が示されています。
このポイントは非常に重要です。
ここで問われているのは、現在、送出機関がいるかどうかではありません。
問われているのは、過去に送出機関経由の受入企業だったかどうか、
そしてその関係が終了してから1年経っているかどうかです。
したがって、企業側が
「今はもう送出機関と提携していない」
「先方との関係はすでに解消した」
「今回は専門職だから別ルートで進めたい」
と考えていても、
少なくとも公開情報ベースでは、提携終了から1年未満の案件を直接採用前提で進めるのは安全ではありません。
この1年ルールをどう読むべきか
これは「1年以内は絶対に一切不可」と断言するための材料というより、
公開情報ベースで最初に置くべき安全側の前提です。
実務では、個別事情の検討余地があるとしても、出発点としてはこの読み方を外さない方が安全です。
別の送出機関へ移る場合は切替えの論点もある
この論点がさらにややこしいのは、
「今の送出機関とは関係が切れた」という事情が、
そのまま「会社単独で進められる」という意味にはならないからです。
実務では、既存の送出機関との関係を終えた後に、
別の送出機関へ切り替えるという動きもあります。
この場合、制度上は単純な終了ではなく、
別の送出機関への移行として整理される可能性があります。
通常の送出機関ルートでどのような提携書類が意味を持つのかは、
Special Power of Attorney(SPA)とは|MWO申請で必要になる場面
で整理しています。
つまり、企業側の感覚としては
「A社との提携は終わった」
であっても、
制度上は
「A社との関係を完全に離れて自由な状態になった」
のではなく、
「B社へ移る流れの中で処理される案件」
と見られる余地があるということです。
したがって、送出機関との関係が終わったと言うときは、
単に「今いない」という説明で終わらせず、
別の送出機関への移行を想定しているのか、
それとも本当に送出機関ルートから離れる前提なのかを分けて考える必要があります。
実務では何を先に確認すべきか
ここまでを踏まえると、実務で最初に確認すべき順序はかなり明確です。
1.過去に送出機関と提携していた企業かどうかを確認する
まず見るべきなのは、現在の候補者との関係ではなく、企業側の履歴です。
過去にフィリピン人材を受け入れたことがある企業であれば、
どの送出機関を通じて、どのような形で進めていたのかを確認します。
2.その提携関係がいつ、どのように終わったのかを確認する
次に確認すべきなのは、
その関係が有効期限切れに近い形で終わったのか、
明示的なキャンセレーションなのか、
あるいは別の送出機関への移行に近いのか、という点です。
ここが曖昧だと、1年ルールの起算点も曖昧になります。
単に「だいぶ前に切れています」という説明では足りず、
できれば資料ベースで日付を追える状態にしておく方が安全です。
3.1年未満なら直接採用前提で突っ走らない
公開情報ベースで安全側に立つのであれば、
提携終了から1年未満の案件については、
最初から直接採用前提で申請設計を組むべきではありません。
この段階では、
既存の送出機関ルートを継続・再整理する方がよいのか、
別の送出機関へ移すべき案件なのか、
それとも将来的に直接採用の可能性を残しつつ今は別のルートを取るべきか、
という順で検討した方が安全です。
4.「制度上あり得る」と「今すぐ進められる」を分けて考える
企業担当者が混同しやすいのは、
「この候補者は専門職だから直接採用の類型には入りそうだ」
という話と、
「この企業は今このタイミングで直接採用を使ってよい」
という話を一つにしてしまうことです。
しかし、実務上はこの二つを分けて考える必要があります。
前者は候補者や職種の性質の問題であり、
後者は企業側の過去の提携履歴と経過期間の問題です。
専門職・技能職の案件でもこの論点は消えない
ここでもう一つ止めておきたい誤解があります。
それは、
「今回は Professional / Skilled Workers(専門職・技能職) に当たる案件なので、
過去の送出機関との提携履歴はあまり気にしなくてよいのではないか」
という理解です。
確かに、専門職・技能職は、直接採用の例外類型として言及される代表的な場面の一つです。
しかし、それはあくまで候補者や案件の類型の話です。
一方で、今回問題にしているのは、
その企業が過去に送出機関経由の受入企業だったかどうか、
そしてその関係が終了してからどのくらい経っているか、という別の論点です。
したがって、専門職・技能職の案件であっても、
直ちに「今回は直接採用で進めて問題ない」とは言えません。
実務では、
候補者の類型の問題と
企業側の提携履歴の問題を切り分けて確認する必要があります。
誤解しやすい整理
専門職・技能職に当たる
= その企業が常に自由に直接採用できる
ではありません。
候補者側の例外類型の論点と、企業側の提携履歴の論点は、
別々に確認する必要があります。
まとめ
過去に送出機関と提携していた企業については、
「今、送出機関との関係がない」という事実だけで、
すぐに直接採用を使えると考えない方が安全です。
公開FAQベースでは、
過去に認可送出機関と提携していた企業は、その提携関係の有効期限切れまたはキャンセレーションから1年後
が一つの目安として示されています。
したがって、少なくとも提携終了から1年未満の案件を、
最初から直接採用前提で進めるのは慎重であるべきです。
また、実務では、単純な提携終了だけでなく、
別の送出機関への移行の論点が入り得る点にも注意が必要です。
そのため、案件の初期段階では、
今提携しているかどうかだけではなく、
過去にどの送出機関とつながっていた企業か、
その関係がいつ・どのように終わったかを確認することが重要です。
つまり、この問題の判断軸は、
現在の提携有無ではなく、
過去の提携履歴と経過期間にあります。
STRUCTURE GUIDE
MWO申請の全体像から確認したい方へ
このページは、送出機関との提携履歴と Direct Hire の関係を整理した実務解説です。
申請全体の流れや、MWO承認からOEC取得までのつながりを先に確認したい場合は、
「MWO申請とは」からご覧ください。
自社案件に当てはめて整理したい場合
送出機関ルートを維持すべきか、直接採用の例外該当性を検討できるか、
また過去の提携履歴をどう確認すべきかまで含めて、自社案件に当てはめて整理したい場合はご相談ください。