入国前結核スクリーニングとは、日本の厚生労働省が定めた入国前検査制度です。
厚生労働省の特設ページでは、JPETS(Japan Pre-Entry Tuberculosis Screening/入国前結核スクリーニング) として案内されています。
これはフィリピンの海外就労制度ではなく、日本へ入国する外国人に対して実施される結核検査制度として位置付けられています。
フィリピン人材が日本で就労する場合には、フィリピン側の海外就労制度に加えて、日本側の入国制度も関係するため、この入国前結核スクリーニングが実務上問題になることがあります。
この解説ページでは、JPETSの目的、対象者、検査の流れ、出国前健康診断(PEME)との違い、在留資格との関係、MWO制度との関係、日本企業との関係を整理します。
この解説ページの前提
本ページでは、検索上の分かりやすさを優先して、JPETS(Japan Pre-Entry Tuberculosis Screening/入国前結核スクリーニング)、PEME(Pre-Employment Medical Examination/海外就労前に受ける健康診断) という表現を用います。
また、本ページでは、JPETS を日本側の入国前検査制度、出国前健康診断(PEME) をフィリピン側の就労可能性確認制度という位置付けで整理しています。
同じ「健康確認」に見えても、JPETSは日本入国前の結核スクリーニング、PEMEは海外就労が医学的に可能かどうかの確認であり、制度目的と根拠が異なります。
目次
結論|入国前結核スクリーニングはJPETSとして運用される日本の入国前検査制度
入国前結核スクリーニングとは、日本へ入国する外国人に対して実施される入国前の結核検査制度です。
厚生労働省の特設ページでは、JPETS(Japan Pre-Entry Tuberculosis Screening) として案内されています。
この制度は日本政府が定めた制度であり、結核の国内流入を防止することを目的としています。
対象となる外国人は、日本に入国する前に指定健診医療機関で結核検査を受け、結核を発病していないことを証明する書類を取得したうえで、在留資格認定証明書(COE)または査証の申請時に提出する必要があります。
この制度はフィリピンの海外就労制度とは別の制度ですが、フィリピン人材が日本で就労する場合には、実務上関係することがあります。
JPETSはフィリピン側の制度ではなく、日本側の入国前検査制度です。
入国前結核スクリーニング制度の目的
入国前結核スクリーニングは、日本国内での結核感染対策の一環として導入された制度です。
日本では、外国生まれの結核患者の渡航元として報告が多い国々を踏まえ、対象国からの入国者について、入国前に結核検査を求める制度が整備されています。
この制度では、日本へ入国する外国人が入国前に結核検査を受けることで、結核患者の入国を防ぎ、国内での感染拡大リスクを抑えることが目的とされています。
つまりこの制度は、入国管理と公衆衛生政策が交差する制度として理解できます。
入国前結核スクリーニングの対象者
入国前結核スクリーニングは、すべての外国人が対象になるわけではありません。
制度上は、主に次のような条件に該当する外国人が対象になります。
・対象国の国籍を有する者
・日本に中長期在留者として入国・在留しようとする者
・特定活動告示第53号・54号(デジタルノマド関係)として入国・在留しようとする者
フィリピンは対象国の一つとされており、フィリピン国籍を有する者が日本へ中長期滞在目的で入国する場合、この制度の対象となる可能性があります。
もっとも、制度上は対象外とされている区分もあります。例えば、特定技能外国人は当面の間対象外とされています。
そのため、対象となる在留資格や制度運用については、一般論だけで判断せず、最新の制度案内を確認することが重要です。
日本側制度との接続は MWO制度と日本の在留資格制度|フィリピン人材受入の二重構造 もあわせて確認すると整理しやすくなります。
検査の流れと提出書類
入国前結核スクリーニングは、一般的に次のような流れで実施されます。
入国予定者
↓
Panel Clinic(指定健診医療機関)で受診
↓
医師の診察・胸部X線検査
↓
必要に応じて喀痰検査
↓
結核非発病証明書の発行
↓
在留資格認定証明書(COE)または査証の申請時に提出
検査の中心になるのは胸部X線検査であり、所見がある場合には医師の判断により喀痰検査が追加されます。
検査の結果、結核を発病していないと判断された場合には、指定健診医療機関からJPETS Clearance Certificate(結核非発病証明書)が発行されます。
また、この証明書の有効期間は、胸部X線撮影日から原則180日とされています。ただし、条件により90日となる場合もあります。
出国前健康診断(PEME)との違い
フィリピン人材の受入実務では、入国前結核スクリーニングと出国前健康診断(PEME)が混同されることがあります。
しかし、この二つは制度として異なります。
出国前健康診断は、海外就労に支障がない健康状態であるかを確認する制度です。
一方、入国前結核スクリーニングは、結核感染の有無を確認する日本の入国前検査制度です。
出国前健康診断(PEME)
→ フィリピン海外就労制度における就労可能性の確認
入国前結核スクリーニング(JPETS)
→ 日本の入国管理制度における結核検査
この違いを理解しておくことで、制度の位置付けが整理しやすくなります。
出国前健康診断側の整理は 出国前健康診断とは|就労に支障がないことを確認する医師の診断 でも確認できます。あわせて、フィリピン側の出国前要件全体の中でどこに位置付くかは 出国前に必要な手続の全体像|OEC・保険・PDOS・健康診断・JPETSの確認順序 を見ると分かりやすくなります。
検査費用は誰が負担するのか
厚生労働省の特設ページでは、入国前結核スクリーニングにかかる費用は申請者本人が負担すると案内されています。
ただし、フィリピン人材受入の実務では、さまざまな事情から外国人本人に検査費用を負担させることは難しいケースが多く、結果的には受入企業が負担する形になることが一般的です。
そのため、制度上の原則と実務上の負担構造は必ずしも一致しません。
実務上は、入国前結核スクリーニングの費用については受入企業側の負担として想定しておく方が現実的です。
技能実習・特定技能との関係
入国前結核スクリーニングは、日本の入国制度に関係する制度であるため、技能実習や特定技能などの在留資格との関係が問題になります。
もっとも、この点は実務上の思い込みで判断しない方が安全です。
厚生労働省の特設ページでは、特定技能外国人は当面の間対象外とされています。したがって、「フィリピン人で特定技能だから必ずJPETSが必要」とは整理できません。
一方で、技能実習など、他の在留資格については対象となる可能性があります。
この制度は在留資格との関係が重要な制度であるため、実務では個別の在留資格ごとに最新情報を確認することが重要です。
日本側制度との関係は MWO制度と日本の在留資格制度|フィリピン人材受入の二重構造 もあわせて確認すると理解しやすくなります。
制度案内は誰が行うのか
入国前結核スクリーニングは日本の制度であるため、日本企業が直接制度案内を行うケースは多くありません。
フィリピン人材受入の実務では、制度案内や検査手配は送出機関が中心となって対応することが一般的です。
送出機関
↓
指定健診医療機関
↓
結核検査
このような流れで検査が実施されるケースが一般的です。
監理団体や登録支援機関などが制度の概要を把握している場合はありますが、実際の医療機関との調整や検査手配を行うのは送出機関となることが多いのが実務です。
MWO制度との関係
入国前結核スクリーニングは、フィリピンの海外就労制度(OFW制度)に含まれる制度ではありません。
この制度は、日本の厚生労働省が定めた入国前検査制度であり、フィリピン政府やMWOが運用している制度ではありません。
ただし、フィリピン人材が日本で就労する場合には、フィリピン海外就労制度と日本の入国制度という二つの制度が同時に関係することになります。
フィリピン制度
↓
MWO手続
↓
OWWA
↓
PDOS
↓
出国前健康診断
日本制度
↓
入国前結核スクリーニング(JPETS)
つまり入国前結核スクリーニングは、MWO制度とは別の制度であるものの、フィリピン人材が日本へ入国する際には実務上関係する制度として理解すると整理しやすくなります。
フィリピン側の手続との接続を全体で見たい場合は 出国前に必要な手続の全体像|OEC・保険・PDOS・健康診断・JPETSの確認順序、日本側制度との接続は MWO制度と日本の在留資格制度|フィリピン人材受入の二重構造 をあわせて確認すると全体像がつかみやすくなります。
日本企業との関係
日本企業がフィリピン人材を受け入れる場合、この制度は企業が直接実施するものではありません。
入国前結核スクリーニングは、日本の入国制度の一部として外国人本人が受ける検査です。
ただし、フィリピン人材受入の実務では、この制度についてフィリピン側の制度で追加費用が発生していると誤解されることがあります。
しかし、この制度はフィリピン海外就労制度ではなく、日本の厚生労働省が定めたルールです。
そのため、フィリピン人材受入の実務では、この検査がフィリピン側の都合ではなく、日本側の入国管理と公衆衛生政策に基づく制度であることを理解しておくことが重要です。
日本企業は実施主体ではありませんが、
実務上は検査費用やスケジュール調整に関与することがあります。
企業側で採用後の整理順序を確認したい場合は 採用後にMWOやOECの論点が出てきた場合の整理順序|企業側が先に確認したいこと もあわせて見ると、JPETSがどの段階で論点化しやすいかを整理しやすくなります。
まとめ
入国前結核スクリーニングとは、日本政府が導入した入国前検査制度であり、厚生労働省の特設ページでは JPETS として案内されています。
この制度では、日本へ入国する対象外国人が、指定健診医療機関で結核検査を受け、結核非発病証明書を取得・提出することが求められます。
この制度はフィリピンの海外就労制度とは別の制度ですが、フィリピン人材が日本へ入国する際には関係する場合があります。
そのため、フィリピン人材受入の実務では、フィリピン海外就労制度と日本の入国管理制度という二つの制度が関係することを理解しておくことが重要です。
日本側制度との関係まで整理したい場合
JPETSはフィリピン側の制度ではなく、日本の入国前検査制度です。
そのため、MWO制度やOECだけでなく、日本の入国制度・在留資格制度との関係の中で捉えると理解しやすくなります。
フィリピン人材受入に関わる制度と手続の全体像を整理したい場合や、
自社案件との関係を整理したい場合は、こちらからご相談ください。
STRUCTURE GUIDE
制度全体の整理はこちら
フィリピン人材受入に関わる制度と手続は、
OFW制度・MWO制度・MWO申請
の3層で整理すると全体像が見えやすくなります。
制度の背景から受入実務までを一覧で確認したい場合は、
以下の全体像ページをご覧ください。
基礎から整理する
医療・検査の違いを整理する
- 出国前健康診断とは|就労に支障がないことを確認する医師の診断
- 出国前に必要な手続の全体像|OEC・保険・PDOS・健康診断・JPETSの確認順序
- PDOSとは|海外就労前に受講する出国前セミナー
- OECとは|海外就労許可証
制度の前後関係を整理する