Dual Accreditation(追加送出機関登録)とは、すでに1社の送出機関と提携している受入企業が、2社目以降の送出機関との登録・提携を進める場面を指して用いられる実務上の呼称です。
まず押さえておきたいのは、1つの受入企業が提携できる送出機関は、原則として1社であるということです。これが、このページでいう1企業1送出機関の原則です。
もっとも、この原則は絶対ではありません。MWO・DMW に申請し、承認されれば、2社目以降の送出機関との提携が認められる場面があります。ただし、複数の送出機関と提携できる場合でも、無制限に増やせるわけではなく、どこまで認められるかはカテゴリーによって異なります。
技能実習制度では2社目以降のハードルが高く、3社目はさらに難しくなります。一方、Professional / Skilled Workers(専門職・技能職) と Specified Skilled Workers(特定技能) については、制度資料や公開情報を踏まえると、最大5社までを前提に考えると全体像を整理しやすくなります。
また、「累計100人なら2社目が可能」といった話は、技能実習制度の文脈でのみ噂として語られてきた論点であり、Professional / Skilled Workers や Specified Skilled Workers の話ではありません。このページでは、原則、例外、上限、制度根拠、必要書類、審査が重くなる理由を順に整理したうえで、その噂話も技能実習制度の節で切り分けて説明します。
このページの前提
フィリピン側では、海外就労に関する制度ルールの中に、複数の送出機関との関係をどう扱うかを定めた条項があります。このページで出てくる Section 108 とは、その条項を指します。
さらに、技能実習制度については、上記の条項だけではなく、MC-18-2018 という通達文書で、2社目の送出機関が認められる条件がより具体的に示されています。なお、この通達文書では旧名称の POLO が使われていますが、本文では読者の分かりやすさを優先して、現在の名称である MWO に寄せて説明しています。また、OTIT は日本の 外国人技能実習機構 を指します。
なお、技能実習制度の文脈で使われる Philippine licensed recruitment agencies や sending organizations という英語表現は、結局はいずれもフィリピン側の送出機関を指しています。このページでは、原則として日本語では「送出機関」に統一して記載します。
そのため、Dual Accreditation は、すべてのカテゴリーを同じ根拠で説明できる論点ではありません。専門職・技能職と特定技能は Section 108 を中心に読み、技能実習制度はそれに加えて MC-18-2018 も読む必要があります。
制度根拠の全体像から確認したい方へ
このページは、Dual Accreditation を制度根拠と実務運用の両方から整理した解説ページです。法令系シリーズ全体の構造や、Company Accreditation、提携書類、雇用条件書類とのつながりを一覧で確認したい場合は、次のページからご覧ください。
目次
原則は1企業・1送出機関
Dual Accreditation を理解するときに最初に置くべき出発点は、1つの受入企業が提携できる送出機関は、原則として1社であるという点です。実務ではここを飛ばして「2社までなのか」「5社までなのか」だけが先に議論されがちですが、その順序では制度の読み方が崩れます。
つまり、Dual Accreditation は、最初から複数社との提携を前提にした制度ではありません。まずは1企業1送出機関が原則としてあり、そのうえで、例外的に2社目以降の送出機関との提携が認められる余地があるかを検討する論点です。
そのため、実務上の問いも、本来は「複数送出機関が使えるか」だけでは足りません。正しくは、どのカテゴリーの案件で、既存の送出機関との関係をどう残し、どの制度根拠に基づいて、どの追加資料で2社目以降を説明するかを問う必要があります。
複数送出機関が認められる全体構造
全体像を先に整理すると、Dual Accreditation は次のように読むのが安全です。
原則
1企業・1送出機関
出発点は1企業・1送出機関です。Dual Accreditation は、この原則の外側にある追加論点です。
例外
承認されれば追加可
MWO・DMW の承認が得られれば、2社目以降が認められる場面があります。ただし、自動的に認められるものではありません。
上限
カテゴリーごとに異なる
専門職・技能職と特定技能は最大5社までの構造で整理するのが実務上自然です。技能実習制度は、公開されている通達文書では最大2機関までが基準点になります。
難易度
同じではない
技能実習制度は2社目以降のハードルが高く、3社目はさらに難しくなります。特定技能は公開書式が見えやすい一方、専門職・技能職は公開申請方法が見えにくいという差があります。
ここで重要なのは、「何社まで可能か」という数字だけで判断しないことです。同じ複数送出機関の論点でも、専門職・技能職、特定技能、技能実習制度では、使うべき公開根拠、確認すべき書類、審査の重さがかなり異なります。
制度根拠をどう読むべきか
Dual Accreditation を正確に説明するには、まずフィリピン側の制度根拠を二層に分けて考える必要があります。
Section 108
複数の送出機関との関係をどう扱うかを定めた条項であり、専門職・技能職や特定技能を考えるときの基準点になります。
MC-18-2018
技能実習制度の文脈で、2社目の送出機関が認められる条件や必要書類を、より具体的に示した通達文書です。
したがって、Dual Accreditation を一律に説明するのではなく、専門職・技能職と特定技能は Section 108 を中心に、技能実習制度は Section 108 に加えて MC-18-2018 も読むという順で整理するのが分かりやすくなります。
ここでの整理
専門職・技能職と特定技能では、複数送出機関の構造そのものを読むことが重要です。一方、技能実習制度では、構造だけでなく、2社目が認められる条件や必要書類まで通達文書で具体化されていることが違いになります。
専門職・技能職の整理
Professional / Skilled Workers(専門職・技能職) については、通常案件では1社で進める理解が強く、その前提で運用されることが多くなります。ただし、それだけで終わる説明では Section 108 の内容を十分に説明できません。
このカテゴリーでは、制度根拠の読み方として、受入企業・雇用主側に複数送出機関の枠組みが予定されていると考える方が自然です。実務上も、最大5社までの構造で理解するのが整合的です。もっとも、ここでいう「最大5社」は、自由追加を意味しません。2社目以降を認めるなら、既存送出機関との関係整理、労働条件の整合性、追加資料の提出が必要になります。
とくに重要なのは、同じ職種区分・同じ勤務地の案件で、送出機関ごとに雇用条件がばらばらにならないことです。そのため、2社目以降を追加する案件では、雇用条件書、賃金内訳表、募集条件の記載を読み合わせながら、どの送出機関経由でも中核条件が整合している状態を作る必要があります。
他方で、専門職・技能職には、特定技能のようにMWO が Dual Accreditation の申請方法を公開書式ベースで示している流れが見えにくいという特徴があります。したがって、外部向けには、「複数送出機関の構造自体は読めるが、特定技能のように公開された申請方法が確認しやすいわけではない」と整理しておく方が安全です。
この論点は、Special Power of Attorney(SPA)とは|フィリピンMWO申請で必要になる場面 や、Master Employment Contractの制度上の位置づけとは|MWO申請で雇用条件と賃金確認が重視される理由 と切り離して理解することはできません。Dual Accreditation は、既存の送出機関との関係の上に、新しい提携書類と説明資料をどう接続するかの論点だからです。
特定技能の整理
Specified Skilled Workers(特定技能) では、「送出機関は1社に限られる」と説明されることもあれば、「2社まで」と語られることもあります。しかし、この論点は、そのような単純な数字だけでは整理できません。
まず押さえるべきなのは、特定技能には Affidavit of Undertaking(誓約書) が確認でき、その書式自体が Part III, Rule I, Section 108 を根拠としている点です。つまり、特定技能では、複数の送出機関との関係が問題になる場面自体が、制度上まったく想定されていないわけではありません。
しかもその内容は、既に提携している送出機関との契約上の約束や責任を引き続き履行すること、同じカテゴリーの労働者については、送出機関が異なっても待遇を揃えること、追加登録に伴う結果について受入企業・雇用主が全面的に責任を負うこと、受け入れた労働者の状況を把握し、重要な出来事は四半期ごとに報告すること などを求める構造になっています。
そのため、特定技能について安全に言えるのは、複数送出機関の場面自体は制度上想定されているということです。共有いただいた実務情報まで含めれば、特定技能も 最大5社まで の構造で整理する方が自然です。
さらに重要なのは、特定技能では Dual Accreditation のための公開書式が確認しやすい という点です。これは専門職・技能職との大きな差です。専門職・技能職では公開申請方法が見えにくいのに対し、特定技能では少なくとも、どのような誓約や説明が求められるかを公開書式から読み取りやすくなっています。
もっとも、ここでも「最大5社まで可能だから通りやすい」と考えるのは誤りです。実務では、既存の送出機関がいることを前提に、追加の誓約書、既存関係の説明、雇用条件の整合性 が問われます。したがって、特定技能の Dual Accreditation も、実際にはかなり構造的な審査になると考えておく方が安全です。
技能実習制度の整理
Technical Intern Training Program(技能実習制度) は、今回の3カテゴリーの中で最も公開根拠が明確です。MC-18-2018 では、日本の監理団体が一定条件の下で、最大2つの送出機関に登録できる構造が示されています。
ここで文書上は Philippine licensed recruitment agencies や sending organizations という表現が使われていますが、実務上は、いずれもフィリピン側の送出機関を指していると理解して差し支えありません。
ただし、ここでも「最大2機関まで」という結論だけを抜き出すのでは足りません。通達文書が重視しているのは、少なくとも次のような条件です。
技能実習制度で重視される主な条件
- 旧制度下での受入実績があり、一定の運用実績が認められること
- 現在のMWO(文書上は旧名称のPOLO)や、OTIT(外国人技能実習機構)で、労働者保護や雇用管理に関する係属案件がないこと
- 同じ区分の技能実習生について、送出機関が増えても待遇水準がばらばらにならず、同等又はそれ以上の条件で揃えられていること
- 既に提携している送出機関との契約上の約束や責任を、引き続ききちんと履行すること
- MWOで内容確認が行われ、承認対象として扱われる技能実習求人票が一定数あること
- 申請時点からさかのぼって直近1年以内に、50人以上、介護職種なら25人以上の受入実績があること
ここで重要なのは、人数基準が累計ではなく、申請時点からさかのぼった直近1年の実績として読まれるという点です。実務では、技能実習制度において「累計100人の受入実績がないと2社目との提携はできない」という噂話が広まったことがありました。しかし、少なくともこのページで基準点にしている公開資料からは、そのような累計基準は確認できません。結論として、累計100人説は、制度根拠として確認できるルールではなく、噂話として扱うのが妥当です。
さらに、技能実習制度では2社目以降の難易度がかなり高くなります。公開されている通達文書で読み取りやすいのは2機関までですが、共有いただいた実務整理まで含めると、2社目は条件付きでようやく検討対象になり、3社目はさらに難しく、MWO の個別評価色が強くなると理解しておく方が安全です。
また、追加受入れの場面では、単に誓約書を出せば足りるわけではありません。公開されている通達文書では、例えば次のような書類が問題になります。
追加受入れで問題になる主な書類
- 送出機関からの追加受入れに関する依頼書
- 原本の技能実習求人票
- 以前承認された技能実習求人票の写し
あわせて確認されやすい資料
- 雇用契約書と追補書
- 厚生労働省の職種・作業基準に関する資料
- 訓練実施スケジュールとその英訳
つまり、技能実習制度の Dual Accreditation は、「2社目を追加する」だけの論点ではなく、その後の技能実習求人票や契約書の運用まで含めて審査される構造です。この点が、特定技能や専門職・技能職とはかなり異なります。
必要書類と審査ポイント
Dual Accreditation では、「制度上あり得るかどうか」よりも、どの書類を、どういう関係整理のもとで提出するかの方が実際には重要です。
少なくとも今回の制度根拠と実務整理から見ると、次の資料が問題になりやすいと考えられます。
主な提出資料
- Affidavit of Undertaking(誓約書)
- 新規送出機関との Recruitment Agreement(提携契約)
- 新規送出機関に対する Special Power of Attorney(SPA)
- 既存送出機関との現在の関係を説明する資料
- 同一カテゴリー・同一勤務地における賃金条件の整合性資料
- 技能実習制度であれば、技能実習求人票、契約書、追補書、訓練実施資料等
審査で見られやすいポイント
- 既存送出機関との関係がどう継続しているか
- 新規送出機関との書類がどう接続しているか
- 同一カテゴリーの労働条件が揃っているか
- カテゴリーごとの制度根拠に沿っているか
- 案件全体として説明が矛盾なく通っているか
審査の核心
Dual Accreditation で本当に問われるのは、「2社目の名前を追加できるか」ではありません。既に提携している送出機関との契約上の約束や責任を残したまま、新しい送出機関との書類をどう接続し、同一カテゴリーの条件をどう揃えるかが核心です。
とくに見落としやすいのは、2社目以降を追加しても、1社目との契約上の約束や責任が自動的に消えるわけではないという点です。そのため、既存送出機関との関係が継続している案件では、新規送出機関の書類だけを整えても足りません。既存関係の説明まで含めて、全体として矛盾のない設計が必要になります。
誤解しやすいポイント
誤解1
Dual Accreditation は常に「2社まで」ではない
技能実習制度では通達文書から「最大2機関まで」と読みやすい一方、専門職・技能職や特定技能まで同じ数字で横展開することはできません。
誤解2
すべてのカテゴリーで「5社まで」とも言えない
Section 108 から受入企業・雇用主側最大5社の構造を読むことは重要ですが、それを技能実習制度にそのまま当てはめるのは誤りです。
誤解3
特定技能と専門職・技能職は同じ見え方ではない
特定技能では公開書式が見えやすい一方、専門職・技能職では公開申請方法が同じように見えるわけではありません。
誤解4
これは単なる送出機関名の追加ではない
Dual Accreditation は、労働条件の整合性、既存送出機関への契約上の約束や責任、労働者管理責任の再設計を伴う論点です。
企業が確認すべき順序
カテゴリーを先に確定する
専門職・技能職なのか、特定技能なのか、技能実習制度なのかを最初に確定します。
↓
原則と例外を分けて考える
まず 1企業・1送出機関 が原則であることを確認し、そのうえで2社目以降の余地を検討します。
↓
制度根拠を切り分ける
Section 108 を基準点に置くべき案件なのか、MC-18-2018 も読むべき案件なのかを整理します。
↓
既存送出機関との関係を棚卸しする
現在有効な契約、既存登録の状態、契約上の約束や責任の履行状況、終了の有無を整理します。
↓
労働条件の整合性を確認する
同一カテゴリー・同一勤務地で、送出機関ごとに条件がぶれていないかを見ます。
↓
追加資料を案件単位で設計する
誓約書、提携契約、SPA、説明資料、技能実習求人票、契約書などを、提出順も含めて組み立てます。
↓
MWO の個別審査に耐える説明を作る
Dual Accreditation は、根拠条文だけで自動的に通る類型ではありません。制度整理と案件整理の両方が通っていることが必要です。
まとめ
Dual Accreditation は、単に「何社まで提携できるか」を数える論点ではありません。本当に重要なのは、1企業・1送出機関という原則を起点に、どのカテゴリーで、どの制度根拠に基づき、どの追加資料で2社目以降を説明するかです。
このページの要点を絞ると、次のとおりです。
- 原則は 1企業・1送出機関 である
- ただし、承認されれば複数送出機関が認められる場面がある
- 専門職・技能職と特定技能は最大5社までの構造で整理するのが自然である
- 技能実習制度は、公開されている通達文書では最大2機関までが基準点であり、2社目以降の難易度が高い
- 「累計100人なら2社目可」は技能実習制度で一時広まった噂話であり、公開根拠のある制度ルールではない
- 特定技能は公開書式が見えやすい一方、専門職・技能職は公開申請方法が見えにくい
したがって、Dual Accreditation を正確に扱うには、「2社までか」「5社までか」という数字だけで結論を出さず、条文、通達文書、書式、既存送出機関との関係、労働条件の整合性を一体で読むことが不可欠です。
STRUCTURE GUIDE
制度根拠の全体像から確認したい方へ
Dual Accreditation は、MWO申請実務の中の一論点にすぎません。実際には、Company Accreditation、提携契約、SPA、求人登録、雇用条件書類、出国手続との接続まで含めて読むことで、どこが制度根拠で、どこが運用論点なのかが見えやすくなります。
法令系シリーズをたどる
提携書類と雇用条件を確認する
Dual Accreditationを自社案件に当てはめて整理したい方へ
Dual Accreditation は、単に2社目の送出機関を追加するだけの論点ではありません。カテゴリー判定、既存送出機関との関係整理、誓約書・提携書類・雇用条件の整合性まで含めて、個別案件ごとに構造を組み直す必要があります。自社案件でどの制度整理が適切かを確認したい場合は、お問い合わせください。